秋ヶ瀬の環境と四季の鳥

















立地環境       

 秋ヶ瀬は埼玉県中央部の荒川沿いの東側に位置しており、県立秋ヶ瀬公園を中心 とした地区の総称である。北側の大久保農耕地、南側の田島ヶ原さくら草公園、 彩湖(旧道満地区)および、公園の西側にあたる荒川の河川敷を含む約5〜10平方 キロメーターの範囲を含んでいる。  この中には水田、畑、荒れ地、河原、川、河川敷、湖沼、湿地、雑木林と多種多 様な環境があることから、きわめて多くの鳥が訪れる場所となっている。また、 関東でもっとも大きなハンの木の群生地でもある。しかし近年、公園、農地および 河川敷の一部が開発され、グランドや、整備された公園に変えられ、環境は急速に 変化してきている。その為に、鳥達にとってその生息環境は必ずしも満足のいかな いものとなってきているが、その周辺の環境の変化がさらに急激である為なのかは 不明であるが、飛来する鳥達の数、種類は逆に増加しているようにも見える。


秋ヶ瀬四季鳥達      


 春

  4月になると大久保農耕地にシギ、チドリが渡来してくる。特にムナグロは数が多く  数百羽になることもある。タカブシギ、チュウシャクシギ、トウネン、アオアシシギ、  キアシシギは常連で、毎年見ることが出来る。ただここ数年は数が激減している。ムナ  グロは近くには来ているのだが大久保農耕地では数が少なくなっている。田圃にはアマ  サギ、コサギ、チュウサギ、ダイサギが採餌しているのが見られる。    一方、雑木林の中ではヒレンジャクやツグミなどの冬鳥達が立ち去るのと入れ替わ  りにセンダイムシクイ、キビタキ、オオルリをはじめとした夏鳥が大挙して羽根を休め  に来る。5月になるとその数はピークに達し、コルリ、ヤブサメ、サンショウクイ、サ  ンコウチョウも見られることがある。コウライウグイスは94年から99年まで観察され  ており、96年には4羽が飛来し日本で初めての繁殖も観察された。   カッコウが追いかけあいをするようになると夏の到来である。             

 夏

  カッコウ、オオヨシキリ、コヨシキリ、セッカ、バン、ヨシゴイなどの夏鳥が葦原 を賑わす。繁殖の季節である。カッコウのオオヨシキリへの託卵が見られるのもこの 頃である。雑木林の中から鳥の種類は減ってくる。ムクドリの中に混じるコムクドリ や、たまに現れるコイカルを探すのも面白い。コジュケイやキジも賑やかである。 以前はコウライウグイスも繁殖の季節となり、盛んに飛び回るのが見られた。  真夏は鳥の数がめっきり減り、そのうちにカラスばかりが目立ちほかの鳥の声が少な くなってしまう。 シジュウカラやムクドリ、ヒヨドリの声があちこちで聞こえてくると秋の始まりだ。

 秋

  まだ残暑が残っている頃に夏鳥の渡りが見られる。シギ、チドリの渡りから始まり、  ムシクイ類、トケン類が飛来する。葦原からはヨシキリ、ヨシゴイもいなくなる。アカ  ゲラやコゲラが目につくようになり、いつのまにか鳥が多くなっている。キビタキ、オ  オルリが見られたり、エゾビタキ、サメビタキ、コサメビタキの3種が揃ってみられる  ことも期待できる。ノビタキはすっかり冬羽で、河原や、刈り入れの終わった田圃を飛  び回っている。ツツドリは若鳥を中心として、数多く見られる。まだ嘴の周りが黄色い  個体が多く、人擦れしていないために間近まで寄ってくることも。今年生まれの若鳥が  胡桃の木につく毛虫を腹一杯食べて体力をつけている姿はちょっとした感動ものである。  河原にはコミミズクが集団で渡って来る。   ガンカモ類の飛んでくるのと入れ替わりにツバメの姿が見られなくなるといよいよ冬  鳥の季節になる。

 冬

  ツグミ、シロハラ、アカハラが渡ってきて、木の上で見られるようになる。マミチ ャジナイが見られることもある。シメがやってくると冬本番。ジョウビタキ、アオジ ,カシラダカが前年と同じ場所で同じポーズをとっていると同じ個体かと思わず聞き たくなってしまう。マヒワ、トラツグミ、アリスイと飛来すれば万歳である。ベニマ シコやアトリが顔を出したり、マヒワの中にベニヒワが混じったりすると忙しくな る。フクロウが通過していくのを探すのも楽しみである。 年が明けると地上はツグミ、シロハラ、シメなどで占められ、薮や葦原の中は、 アオジ、クロジ、カシラダカ、ホオジロ、カワラヒワ、オオジュリンで一杯になり、 シベリアジュリンやカヤクグリが出てきたりして驚かされる。 川や貯水池にはキンクロハジロ、ホシハジロ、マガモ、コガモ、オナガガモ、ヒド リガモと一通り揃う。カイツブリは番で採餌に忙しく泳いでいる。カンムリカイツブ リも常連である。ミミカイツブリやハジロカイツブリが顔を出すこともある。ノスリ 、オオタカ、チョウゲンボウも見られる。 2月下旬にはこれもお待ちかねのヒレンジャクがやって来て、いつものヤドリギに 集まってくる。本格的に見られるのは3月に入ってからとなる。毎年数羽から10羽位 が見られる。 いつのまにかツグミが葦原の中に集まり始め、カシラダカ、コジュリン、オオジュ リンの頭が黒くなってくるともう春の始まりだ。そろそろジョウビタキもアオジも姿 を見かけなくなってくる。

          

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